古代インドの宗教とシンボリズム
松濤誠達著 (大正大学名誉教授)
本書は,サンスクリット学者として著名な松濤誠達教授が、約40年の長きにわたり各誌に発表してきた論文を一書に集成したものである。
第T章では,ヴェーダ,マハーバーラタに関する論文を収録した。とりわけ「祭祀と戦争」という論文は,独自の切り口でヴェーダ世界の一側面を解明した名論文として知られる。
第U章ではプラーナ聖典に関する論文を収録した。「プラーナ聖典における絶対者」では,ヒンドゥー教の重要な神格である,ヴィシュヌに焦点を当て,その性格の解明に取り組んでいる。
第V章では,古代インドにおける神話,伝説,説話に関する研究を収めた。著者は,オランダ・ライデン大学留学の経験を生かし,古代インド研究にいち早く構造人類学の手法を導入した先駆者として有名であり,曖昧模糊としていると考えられてきた古代インドの神話世界に隠された原理があることを論証している。なかでも「シュナハシェーパ説話の意味」は,それまで本邦ではほとんど取り扱われたことがなかった「シュナハシェーパ伝説」の本格的解明を目指した論文として知られている。
第W章では,古代インドのシンボリズムに関する論文を収録した。数のシンボリズム,「四辻のシンボリズム」「蟻塚の中の世界」等,古代インドの象徴世界を厳密な文献学に基づいて解明している。
第X章では,仏教に関する論文を収録した。「釈尊は墓地で何を実践したか」「仏教が排除したもう一つの「輪廻説」」等,仏教研究に新生面を切り開いた論文として高く評価されているものである。
第Y章では,比較思想に関する論文を収録した。著者は,恩師である中村元博士が切り開いた比較思想の分野でも独自のスタンスで取り組み,「芳香あふれる国インド」等,重要な論文を執筆している。
以上のように,これまで未開拓の領域であった,古代インドの宗教,とりわけそのシンボリズムに関する研究は他者の追随を許さないものであり,研究者必携の論文集である。また異文化を見る新たな視点を提供するものとして,専門家のみならず,古代インドに関心をもつ全ての方に一読が勧められる。
● 目 次
はじめに
凡 例
第T章 ヴェーダ,マハーバーラタ
1.プラーナ文献に見えるヴェーダ
――特に『ヴィシュヌ・プラーナ』の記述を通じて――
2.『ジャイミニ・グリヒヤスートラ』におけるサマーヴァルタナについて
3.『マハーバーラタ』第二篇の意味
4.Vajasaneyi-Samhita とMahabharata との関係
――ラージャスーヤにおける一つのマントラをめぐって――
5.古典インドにみる信仰
――特にヴェーダの祭祀との関連において――
6.インド浄土教
――「ヴェーダ」における称名を中心に――
7.祭祀と戦争
第U章 プラーナ聖典
1.Purana 文献の系統に関する試論
――Yama 誕生の説話を中心として――
2.Purana 文献に見えるSunahsepa 伝説
3.プラーナ聖典における絶対者
――『ヴィシュヌ・プラーナ』に現われる絶対者――
4.プラーナ文献における人間観
――世界創造論を通じて――
第V章 神話,伝説,説話
1.インドにおける神話とその継承
――古代インド神話解釈の一可能性――
2.ヒンドゥイズムにおける倫理観の一側面
――ヒンドゥイズムの一伝説に見える王の罪の状況を中心に――
3.インドの神話伝説に見える「王」の一側面
4.古代インド神話解釈の試み
――古代インドのトリックスター論覚え書き――
5.古代インド説話の構造論的理解
――デーヴァーピとシャンタヌの説話の場合――
6.シュナハシェーパ説話の意味
7.インド文学よりみた大智度論の説話内容
――尸毘王説話の背景としての施与の思想――
第W章 シンボリズム
1.古代インド神話・伝説の解釈をめぐる一問題
――四辻のシンボリズム――
2.インドのシンボリズム
3.古代インド祭祀における数の問題
――序章・1,2,および3の考察――
4.古代インドにおける数のシンボリズム
――7の考察――
5.古代インドにおける数のシンボリズム
――『シャタパタ・ブラーフマナ』を中心とした7の検討――
6.古代インドにおける数のシンボリズム
――8の意味するもの――
7.古代インドのシンボリズム
――蟻塚の中の世界――
8.北東の象徴性
9.樹木の象徴性
第X章 仏 教
1.ブッダが受けなかった布施
――仏典の構造論的解明の試み――
2.仏教教団の発展と矛盾
3.仏教が排除したもう一つの「輪廻説」
――父と息子の一致をめぐって――
4.仏教における「交換」のシンボリズム
――釈尊が留まった場所――
5.釈尊は墓地で何を実践したか
――不浄観ノート――
6.不浄とみなされた釈尊
――『ヴァサラ・スッタ(Vasala-sutta)』をめぐって――
7.出家修行者とチャンダーラ
8.無我思想と般若波羅蜜
――無我思想の源流を求めて――
9.釈尊伝の文学性
10.仏教的アイデンティティの源流
─―シュラマナ諸思想との闘い――
第Y章 比較思想
1.プラーナの哲学
──古代インドにおける呼吸観――
2.サーンキヤ思想とサルトルの存在論
──ジェラルド・J・ラーソン博士のサーンキヤ思想理解をめぐって──
3.ラーダークリシュナン
4.ウパニシャッドをめぐる異文化接触
――ショーペンハウアーのウパニシャッド理解をめぐって――
5.芳香あふれる国インド
――精神の緊張と心身の癒し――
初出一覧
●判型:A5判、上製本、函入
●頁数:(序文xii頁+本文687頁)
●刊行日:2006年12月12日
●出版社:大正大学出版会
●ISBN : 4-924297-42-9
●価格 11,550円
(本体11,000円、消費税550円、国内送料サービス:但し離島を除く)
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